もうすぐクラス会の時期だね

2015年07月31日

クラス会とか同窓会 俺は全く行かないたちなんだが。
ある年、中学時代のクラス会の案内が届いた。
高校以来、30回以上俺は引っ越しをしている。
親も5~6回かな、家を替わった。
中学時代の友人たちとの交わりも途絶えたままだ。
それでよく探して案内を送ってきたなと感心した。
しばらく俺はその葉書を眺めていた。
重い腰をあげて行く気にさせられたよ。

中学時代どちらかというと反目しあってたやつが幹事だった。
会場に着くなりそいつが俺に抱きついて泣くんだよ。
「おまえが来てくれて、今回のクラス会を集めた甲斐があった」って。
おまえは田中角栄になったのか?って俺はあっけにとられたぜ。
悪い気はしなかったがね。

宴もたけなわになった頃、女が一人遅れて入ってきた。
目が合った。
時間が止まった。

その女はかわいくて、中学時代男の子の人気の的だった。
俺はできるだけ近づかないようにしてた。
ゆで卵臭くて。小さい頃ゆで卵が俺は嫌いだったんだよ。
それに、すぐ泣くんだ。
そのうえ何かあるとすぐ父親が出てくる。
そんなやつ面倒で関わっていられねえ。
苦手だったな。

俺の浪人時代 帰省途中の電車の中でそいつと偶然出くわした。
同じ車両の中で俺のことをじっと見てる女がいる。
んっ?あいつはもしかして?あの泣き虫か?
○○くんでしょ。久しぶり。
声をかけてきた。
ああ。○○かぁ。見違えるなぁ。
彼女は美大に通っていた。
すごくボーイッシュに変身し、もう泣き虫は卒業してるようだ。
話がはずみ、二人はすぐ恋に落ちた。
家の近くを流れている清流を小舟で一日中遊んだ。
全く泳げなかった彼女に泳ぎを教え、疲れると河原に並んで座り川の流れを眺めた。
二人とも郷里から電車で2時間離れた小都市で暮らしてることもその恋に拍車をかけた。
自転車で二人あちこち遠出した。
夜行列車で海にも行った。朝もやの中、波の音を聞きながら砂浜を二人で歩いた。

二人の濃密な時間はあっというまに過ぎていった。
彼女の父親が村長選挙に立候補した。
彼女はその手伝いで実家に帰った。
俺の親父が反対候補の参謀を勤めた。
彼女の実家に電話しても取り次いでくれなくなった。
手紙を出しても、多分彼女の手には渡らなかったのだろう。
会えなくなった。
会えないまま、東京の大学に俺は行った。

それから15年。
俺たちは今、見詰め合ってる。
ことばはいらない。

そこに集まってるクラスメートは、俺たちが昔付き合ってたことを誰も知らない。
彼女は俺から離れたところに座り、その会の間、俺とことばを交わすことはなかった。
クラス会が散会した。

川沿いを一人でしばらく歩き、川原に下りた。
彼女が一人座って川の流れを見ている。
隣に座って俺もいっしょに川を眺めた。
もうすぐクラス会の時期だね


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tsuchi│2015年07月31日 13:35 │コメント(0) │カテゴリ:ちょっとした話
 
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