Barで

2010年11月30日

女の子が3人入ってきた。
最初不安そうだったが、すぐに打ち解けた。
マスターは黙ったまま、ほんの少し微笑んだだけだ。

それにしても不思議だ。
目立たないし、入りにくいBarなのに、やたら可愛い女の子が多い。
70%くらい女性客で、しかもみんな魅力的だ。

俺はいつも隅っこで、目立たないように呑んでるから、ほとんど誰とも関わりを持たない。
残念ながら、そんな可愛い女性たちとも。


唐突にマスターは尋ねた。
一番明るく、一種不思議なオーラを持ってる女性に。
「その右腕は事故なの?生まれつきなの?」

えっ!
俺は隅っこで勝手にあわてた。
急に前触れもなく、そんなこと聞くかぁ?
泣き出したらどうするんだ?
席立って帰るかもしれないぜ・・・
場が急にしらけるかも?
ほん一瞬で、その他のかもかもかもが、俺の頭ん中ぐるぐる駆け巡った。


女の子はにこにこしながら、右腕の裾をまくりあげた。

う~ん!あんたら二人ともちょっと変じゃない?
と俺は思ってしまう。
俺が変なのか?

右腕の肘に、手首らしものが繋がり、指はまるで未発達で、三つ乳頭くらいのふくらみが見える。

マスターしばらく黙ったまま、その短い腕を見詰めてる。
何も言わないまま、ただ見詰めてる。
女の子はにこにこしたままだ。

マスターがふわ~ぁっと動いた。
両手でその子の手を包み込んでる。
しばらく、そのままじっとしてた。

包み込んだまま「かわいいねぇ」と
感嘆極まりないような声で、マスターは呟き。
まだじっと包み込んだままだ。
女の子はにこにこしてる。


時間が止まった。


手が離され、時間が動きはじめた。
「これ指だよね。ここ感じるんじゃない?」

なぁっなぁ~んてこと聞くんだ?
マスターそれってセッセクハラにならんかぁ?

女の子「はい」と、にこにこしたまま応える。

なんて素直な子なんだ。
俺はうるうるしてしまう。


それから、その子とマスターは
サリドマイド児のこと。
彼女がアルバイトに雇ってもらうのに苦労したことなど。
話はどんどん発展していった。



※お客さんノートに書いた、その子の手記※


ワタシはえみの右手です。
えみが幼い頃は、イジメられるだけだった。
それは義手をはめていた。から?
小5の時に義手をはずさはった。
不思議な事にそれからは、イジメられることが全くなくなった。
ちょっと うれしかった。
ワタシのこの姿をえみが認めた様だ。
でも、夏の時期は 街、人ゴミを歩く時、なんだかコソコソとしている様だ。
そんなえみも今の旦那と出会い、結婚した事によって、又、ワタシの姿を認め、好きになってくれた様だ。

今夜沖縄でここのマスターに出会った。
初対面のマスターにワタシはマスターの両掌でやさしく、あたたかく抱いてもらった。
数分前に初めて顔を会わせたマスターに抱いてもらった。
こんなことは、ワタシが生まれて初めての事だった。
いつも目立たない様、えみを悲しませない様に生きてきたけど、マスターに「かわいい」って言われた。
すっごくうれしくてワタシも、えみも幸せを感じた。
マスターに「自慢しな」ゆうてもらい自信ついた。
きっと、これからはえみもワタシの事 自慢 してくれるはずだ。



   ーby のんー

         



tsuchi│2010年11月30日 22:20 │コメント(0)
 
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